補足(34) 青瓦台事件に対する日共見解の破廉恥なすり替え考

 宮地健一のホームページ共産党、社会主義問題を考えるのリンク先に「お笑い日本共産党『青瓦台事件に対する日本共産党の無責任な総括』」がある。指摘されてみて、なるほどこれは宮顕―不破系のいかんともし難き悪質さを暴いていると思い、れんだいこも検証する。但し、他に資料が無いので当分そのまま転載する。宮地さん、お笑い日本共産党さんご了承宜しくお願い申し上げます。

 
2002.9.12日、2004.7.28日再編集 れんだいこ拝


【青瓦台事件とは】
 「1968(昭和43)年1月に北朝鮮工作員が武装してソウルに侵入した。当時の朝日新聞記事などによれば、三十名前後の不審な集団が大統領官邸近くに現れ、警察が不審尋問をしたところ、道路の真中で彼らは機関銃を乱射した。不審尋問をした警官はその場で即死し、民間人五人が射殺され、武装ゲリラは通行中の市内バスに手榴弾を投げて逃走した。韓国軍が出動して武装ゲリラの殆どを射殺し、一人を逮捕した。逮捕された北朝鮮工作員によれば、彼らは朴大統領を暗殺するためにソウルに侵入した。ソウル市民を恐怖のどん底に陥れた」、という事件であった。

【赤旗の当初の事件報道論調】
 「お笑い日本共産党」氏は、青瓦台事件に対する日本共産党の無責任な総括」(2001.5.14日)と題して次のようにコメントしている。
 こんにちわ。お笑い日本共産党です。1968年1月21日から22日未明にかけて、北朝鮮の武装ゲリラが韓国の大統領官邸のある青瓦台を目指して攻撃した事件がありました。いわゆる青瓦台事件です。大統領は無事でしたが、五百bの所まで迫られました。その他、その頃は北朝鮮による武装ゲリラ(要するに、テロ集団)が韓国で暴れていました。ドサクサに紛れて革命をしようとしたのでしょうかね。

 今や、青瓦台事件は北朝鮮のやったことだということは、世界の常識です。『北朝鮮覇権主義への反撃』(赤旗編集局編、新日本出版社、1992年)という本の中で、不破委員長は青瓦台事件は北朝鮮が行ったものだとして、批判しています。北朝鮮は、あの日本共産党も認めるテロ国家という訳です。

 ところが、当時、日本共産党は青瓦台事件についてどのような反応をしたのでしょうか。僕は「勝共」というホームページから、当時の日本共産党は青瓦台事件について、南側のでっち上げだみたいな内容のことを言っていたという情報を得ました。

 それで、そのことについて主にクラッシャー・カズさんと議論しました。クラッシャー・カズさんは、先に上げた「北朝鮮覇権主義への反撃」を持ち出して、「議論はこの本を読んでからだ。日本共産党は青瓦台事件を北朝鮮のやったこととして非難しているではないか」というようなことを言いました。それで、「当時の赤旗を調べて証拠を探したらどうだ。議論はそれからだ」といわれました。

 僕は当時の赤旗を調べて、掲示板に載せたし、クラッシャー・カズさんにもさらなる議論を促す直メルをしましたが、お返事はありませんでした。多分、クラッシャー・カズさんも当時の赤旗を読んでいなかったのだと推察されます。それで、日本共産党が書いたあんな本を読んで、青瓦台事件における日本共産党の見解は正しいものだと信じてしまったのでしょう。これは日本共産党の側に立つ人々がよく陥る誤りなので、気を付けていただきたいものです。また、はからずも、クラッシャー・カズさんが紹介してくださった本により、共産党のことがさらに良く分ったので、その点は大いに感謝しています。

 それでは、当時の赤旗で日本共産党がいかに北朝鮮の側に立ち報道していたかを振りかえるとともに、後の92年に刊行された「北朝鮮覇権主義への反撃」と比較し、いかに日本共産党(不和さん)がしらじらしく問題を総括し、間違いを認めず逆に嘘をついているということを指摘しようと思います。
 「まずは、当時の赤旗から」と述べ、次の赤旗記事を紹介している。
 1968年1月24日。「ソウル市内で銃撃戦」−武装部隊かいらい警察署長ら射殺

 ソウルからの通信報道によれば、二十一日夜から二十二日未明にかけ、ソウル市内に多くの人員からなる武装小部隊が出現し、かいらい警察部隊と激戦をくり広げました。この武装小部隊は二十一日夜十時頃、ソウル市郊外、洗剣亭の方向から市内の中心地に向かって来ましたが、青雲洞の慶福中学校裏門にいたり、そこにあるかいらい警察派出所の警察官が前に立ちふさがると、「われわれは機間員である」とこたえ、そのまま進みました。武装小部隊は朴正○(○は漢字が分らない。以下同じ)一味がねじろにしている青瓦台から五百メートルの地点まで進出し、ここで朴一味が急遽出動させたかいらい警察部隊および特殊部隊と銃撃戦を繰り広げました。戦闘は二十二日未明まで数時間にわたって激しくつづきました。武装小部隊は警察部隊を指揮していたかいらい○路警察署長を射殺したのをはじめ、かいらい警察およびその手先数十名を殺傷し、動員された軍用車両4台を手投げ弾で破壊しました。

 あわてふためいたアメリカ帝国主義と朴正○一味は二十二日未明から数回にわたってかいらい軍部隊の頭目どもの緊急集会を召集する一方、「緊急動員令」を発動し、アメリカ侵略軍およびかいらい軍二個師団と一個戦闘団など数万人の兵力を動員し、いわゆる「捜査作戦」をくりひろげ、ヘリコプターをソウル市内に飛ばし、「空中捜査」を行うなど狂奔しています。

 (中略)米日反動派に国を売り渡している売国ど朴正○一味を打倒しようとする南朝鮮人民の英雄的闘争は日ましにいっそう力強くくりひろげられています。

 この記事に対して、お笑い日本共産党氏は次のようにコメントする。
 このように、赤旗では、テロ部隊の英雄的活躍が書かれております。韓国の政府の人が「一味」で、ゲリラが「部隊」なんですね。それに、「かいらい」って言葉も好きなんだね。

 二十五日の赤旗にも関連記事があります。見出しだけを書くと、「米第二師団を襲撃」「広がる武装遊撃隊の闘争」「朴一味人民弾圧強める 武装遊撃隊の襲撃事件を口実に」などがあります。

 一月二十七日の赤旗にも「ソウル市でまた攻撃」「南朝鮮の武装遊撃隊」というタイトルが見えます。一月三十日には「武装遊撃隊引き続き活動」「京畿道各地で敵を悩ます」とあります。

 そして、一月三十一日には「北朝鮮の経済停滞全然見当はずれ 米朴の支配こそゆらぐ 事件をめぐるデマ宣伝」という見出しがありまして、その中に、「立ちあがる朝鮮人民」という記事があります。最初の一部を引用します。

 次に「北朝鮮ゲリラ侵入」のデマ宣伝の問題です。今南朝鮮の各地で南朝鮮の人民が武器を取って立ちあがり、アメリカ占領軍と朴かいらいせいけんを震え上がらせていることは事実です。しかし、この南朝鮮人民の愛国闘争を「北朝鮮のゲリラ侵入」だと言っているのは、アメリカ帝国主義と反動主義がねじまげたデマ宣伝です。(以下略)

 このように、赤旗では、相次ぐ武装ゲリラ(テロ)事件を南の人民がやむにやまれず立ちあがったのであって、北の侵入だというのはデマだと主張していることがわかります。まあ、他にも詳しい記事があるのですが、同時の赤旗の論調はこれくらいで分ってもらえたかと思います。

 れんだいこが、他の赤旗記事を補足し、日共党中央が「青瓦台事件」発生当時、概要「青瓦台事件は南朝鮮人民の闘争であり、労働者、農民、学生の多様な形のたたかいの発展の基礎のうえに武装闘争に発展してきたもの」と認識していたことが判明する。1968(昭和43).1.31日付けの赤旗記事「米の軍事挑発で朝鮮をめぐる情勢緊迫」がそれを証左している。次のように書かれている。
「つぎに、『北朝鮮武装ゲリラ侵入』のデマ宣伝の問題です。いま南朝鮮の各地で南朝鮮人民が武器をとってたちあがり、アメリカ占領軍と朴かいらい政権をふるえあがらせていることは事実です。しかしこの南朝鮮人民の愛国闘争を『北朝鮮武装ゲリラの侵入』だといっているのは、アメリカ帝国主義と動勢力がねじまげたデマ宣伝です。そしてこれは、南ベトナム解放民族戦線のたたかいを『北ベトナムの浸透』といっていることでもわかるように、アメリカ帝国主義の常用手段です」(中略)

「アメリカ帝国主義は南朝鮮人民のたたかいが武装闘争にまで発展した現在、ベトナム侵略戦争で使いふるした手をふたたびつかって『北朝鮮武装ゲリラ侵入』の大さわぎをやっているのです。南朝鮮人民の闘争は労働者、農民、学生の多様な形のたたかいの発展の基礎のうえに武装闘争に発展してきたものです」(中略)

「アメリカ帝国主義と朴政権は、この南朝鮮人民のやむにやまれぬ愛国闘争を『北朝鮮武装ゲリラ侵入』とさわぎ立て、国内の目を『北』にそらしながら、国内のファッショ体制をいっそう強化するとともに、これを朝鮮民主主義人民共和国にたいする軍事挑発と戦争準備の口実にしようとしているのです」。


【「不破論法のその後のすり替え詭弁批判」】
 「お笑い日本共産党」氏は、「青瓦台事件発生当時の日共見解」に対する「不破論法のその後の詭弁」を次のように暴露している。
 では、次にいよいよ、「北朝鮮覇権主義への反撃」(新日本出版社1992年刊 p14〜15より)という本で不破さんがこの事件をどう捉えているか見て行きます。 「南進」問題の真剣な検討を求めて 相次ぐ南朝鮮での「武装遊撃隊」の報道(不破さんが書いた文章です)
 南朝鮮で「武装遊撃隊」などの「武装闘争」が始まったということは、1967年の夏ころからしきりに報道されるようになっていました。「革命的大事変」を「主導的」に迎えようという金日成のよびかけが、南に「革命的大事変」が勃発する日が近いという判断を示すと同時に、そのときには、「大事変」を南だけの成り行きにまかせることはせず、北が「主導的」に介入するぞという意思表示だとしたら、それを転機として、南朝鮮の「武装闘争問題」が、アジアの平和全体にかかわる、いっそう危険な展開を見せるだろうことは、当然、予想されたことでした。(ちょっと中略)

 赤旗で武装闘争イケイケの記事書いていたのに、よく言うよね。次のページの上には当時の朝日新聞が載っています。「ソウルで市外戦 北朝鮮武装スパイ 不審尋問の警察官を銃撃」「韓国姿勢を硬化 米軍と協力 大捜査網」などの見出しが見えます。繰り返しますが、これは「朝日新聞」です。赤旗ではありません。

 僕は、これ、最初みたとき、一瞬赤旗の記事かな、と思いました。だって、当時から自前の党機関紙があった訳ですからね。でも、下の注を見ると、「朝日新聞」だと書いてある。とても、当時の赤旗の紙面などをコピーして出せなかったんでしょうね。

 中略して引用を続けます。

 こういう状況(武装ゲリラ出没の状況)は、多少の波はあっても、その後、ずっと続きました。この「武装部隊」が、南での闘争の必然の所産ではなく、きわめて人為的色彩の強いものであったことは、当時の状況からも容易に推察されることでした。後日のことですが、青瓦台を襲撃した部隊が、北から送り込まれた特殊部隊であったことは、ただ一人生き残って逮捕された隊員が裁判で証言した内容からも明らかになったことです。

 当時の赤旗の論調でそのまま筋を通したなら、その隊員は「反動的な裏切り者」ってことになるんだけれどね。共産党は筋を通すのが好きなのにね。おかしいね。

 何が、「容易に推察されることでした」なんでしょうね。こまで「俺たちは西側に立って見ているんだもんね」みたいな書き方をされると、もう呆れかえってしまいますね。赤旗に書いていたように、一連のゲリラのテロは、南の人民による革命ということになっていたんじゃなかったんですか。それで、北朝鮮の仕業だというのは、デマではなかったのでしょうか。

 これではっきりしました。不破さんは、嘘つきの確信犯です。

 過去に青瓦台事件に関して日本共産党が何を言ったのか知らないはずはないと思うけれど、ここまで堂々と嘘をつくなんて、と思いました。前にも僕は言ったけれど、日本共産党は「自己肯定」というキーワードで論じることが出来ると思います。要するに、立場とかメンツとかを重んじるんですよね。その点は北朝鮮みたいですよね。だから、何とかいい訳をしようとする。ソ連が崩壊すると、正確なタイトルは忘れたけれど、「ソ連覇権主義と戦って三十年」みたいな本を出したりする。この「北朝鮮覇権主義への反撃」もそういった種類の本ですね。これまで北朝鮮と仲良くして来たことを誤魔化して、「実は我が党も北朝鮮のやり方はおかしいと、つねづね思っていたのですよ。我ながら筋が通っているでしょ」という内容の本を書いたのでしょうね。

 このように、日本共産党の過去の報道の歴史的事実を歪曲するようなやり方は危険ですね。ニコニコした不破さんの写真を見ると、怖くなります。人間的に。以上です。

 P.S.
 僕はアメリカ文学が専門だから、政治科学がどのような研究や実践をしているのかはよく分らないけれど、政治の研究って騙し合いなのかな、と思いました。自分の立場を守るために、騙し合う。そうだと、研究態度として不誠実ですよね。(了)


【れんだいこの補足「黒坂真氏の論評」】
 黒坂真氏は、「北朝鮮を美化した日本共産党」で次のように述べている。これを参照、引用する。
 不破氏はかつて「赤旗」が北朝鮮工作員によるテロを美化したことについては沈黙し、あたかも日本共産党が当時から北朝鮮工作員によるテロを批判したかのような議論をしている。不破氏のこのような議論は、日本共産党最高幹部が、「中央の権威を守るためには史実を隠蔽しても構わない。都合の悪い論点が党員や『反共勢力』から提起された場合は沈黙するか、別の話を始めて論点をそらす」という政治手法を保持していることを示している。宮本顕治氏らが北朝鮮工作員によるテロを美化したことが多くの党員や支持者に知られるとまずいから、不破氏は巧妙に歴史の隠蔽を図っているのだ。

 この事件について、「日本共産党の七十年」(上のp369)は次のように述べている。
「会談で、宮本書記長は率直に『南進』の危険性を提起し、それにたいして金日成は、当面は『南進』政策をとらないことを表明した。しかし、青瓦台襲撃は、生きのこった襲撃部隊員の証言からもあきらかなように、北朝鮮から送りこまれた特殊部隊によるものであったし、南朝鮮での『武装闘争』のたかまりなどの大々的な宣伝や『南進』をにおわせた『宣言』をおこなったことなど、北朝鮮側の行動や立場は、その後も大きな疑問をのこした」。

 黒坂真氏は、「日本共産党の七十年」文中の上述記述に対して次のようにコメントしている。

 この記述から考えると、宮本顕治氏らも昭和43年1月のテロが北朝鮮工作員のテロによるものであることを当時から確信していたのかもしれない。そうであるなら、宮本顕治氏は一般の党員や「赤旗」読者には虚構宣伝を広め、それを「日本革命」の名のもとに合理化していたことになる。共産党とは革命のためならいくらでも嘘をつく、恐るべき人間の集合体なのである。


(私論.私見) 「お笑い日本共産党氏の『青瓦台事件に対する日本共産党の無責任な総括』」に対するれんだいこ評

 淡々と書き上げた好文である。「日本共産党は『自己肯定』というキーワードで論じることが出来ると思います」、「不破さんは、嘘つきの確信犯です」は、ズバリ核心を衝いている。調べれば調べるほどこういう詭弁、歪曲、すり替え、居直りのオン・パレードであるが、お笑い日本共産党さんは言い逃れの利かない弁明を見事に抉っている。




(私論.私見)