補足(17)―4114A 不破理論解析考(四―A)アメ帝論

2002年10月8日(火)「しんぶん赤旗」北京の五日間(22)中央委員会議長 不破哲三 江沢民総書記との首脳会談(二)

なぜ、日本・中国・朝鮮半島の三者の関係を取り上げたか

 首脳会談での私の最初の発言は、大要をすでに「しんぶん赤旗」(九月五日付)に発表してあるので、参照していただきたいが、まず最初に取り上げたのは、北東アジアの平和と安定の問題、なかでも、日本、中国、朝鮮半島の三者のあいだに、安定した平和の関係をきずくための努力である。

 四年前の首脳会談では、私は、日中間でまもるべき関係の基準として「日中関係の五原則」を提唱した。この日の夜の「宴会」の席でこの話が出たとき、政治局委員で社会科学院院長の李鉄映(りてつえい)さんは、「それは、政界でも理論界でも有名な五原則ですよ」と即座に答えたから、中国ではすでに一定の市民権をえているようである。しかし、情勢はさらに進んで、日中関係を大事な軸にしながら、北東アジア全体の平和関係の構築を考え、すでにこの点では先んじた発展の状況を見せている東南アジア諸国の努力とこれをつなげてゆく必要がある――今回、北東アジアの三者の関係という形で問題を取り上げたのは、こういう問題意識にたってのことだった。

 私のいだいている問題意識は、戴秉国(たいへいこく)部長との会談のなかで、日本、中国、朝鮮半島のそれぞれにかかわって、かなり立ち入って説明していた。それで、すでに報告ずみであろうことを念頭において、この席では、問題のごく簡単な説明にとどめた。

南北のいずれをも「主」としない冷静な対応に注目

 しかし、江総書記は、的確に私の問題提起をとらえ、そのあとでの自分の発言のなかで、とくに朝鮮の南北関係にたいする中国の態度について説明した。一昨年の上半期に大きく進んだ南北対話が、その後停滞し、また進展しはじめた状況に触れながら、「朝鮮半島の情勢については、私たちの立場は明確だ。朝鮮半島の安定に寄与すること、南北関係の平和的解決を促進することに有利なものにはすべて賛成する、マイナスになるものには反対する、ということだ」と述べる。

 私は、江総書記のこの発言が、「北」と「南」のどちらを主としどちらを従とするといった関係でなく、南北の関係にたいへん冷静に対応している、という点に、注目した。

対テロ戦争とイラクへの先制攻撃のあいだには決定的な違いがある

 世界情勢の問題では、私は、唐家〓(とうかせん)外相に話したことの繰り返しは避け、問題を昨年のテロ事件以後にしぼり、とくに対テロ報復戦争といまアメリカが計画している対イラク軍事攻撃とのあいだには、世界の平和のルールの立場から絶対に見過ごすことのできない決定的な違いがあるということ、このことを浮き彫りにする点に、まず中心をおいた。なんの具体的証拠もなしに、アメリカがその国を疑っている、憎んでいるというだけで、軍事攻撃をくわえる、しかも核兵器の使用の可能性さえ、公然と問題にする、というのは、国連憲章が明確に禁止している「先制攻撃」にほかならない。

アメリカは、中国にたいしても「先制攻撃」の権利を持つと宣言した

 そしてまた、イラクにたいして、この種の「先制攻撃」が実行されたとしたら、アメリカは、同じ論理で、将来、中国に「先制攻撃」をくわえる権利を手にいれたことになる――私は、アメリカ国防総省が今年発表した二つの報告、とくに八月に発表したばかりの「国防報告」を詳しく紹介して、イラク攻撃のさしせまった情勢のなかで、アメリカが「国防報告」を発表し、中国が、アメリカが「先制攻撃」戦略の矛先を向けるべき対象国であることをわざわざ宣言した意味を重視すべきだ、と強調した。(つづく)


2002年10月9日(水)「しんぶん赤旗」北京の五日間(23)中央委員会議長 不破哲三 江沢民総書記との首脳会談(三)

この国際行動では「アメリカ帝国主義反対」といった旗はいらない

 私はさらに発言を続けた。イラク攻撃に反対する国際行動の性格の問題である。

 この国際行動では、以前のように、「アメリカ帝国主義反対」という旗を高くかかげる必要はない。私は、この行動の性格について、問題は、国連憲章にもとづく平和の国際ルールを守ることであり、そのルールを破ろうとする者があれば、誰であってもそれを許さない、という取り組みであって、この国際行動には、世界の世論の大きな支持を獲得する展望がいよいよ大きくなっていることを、力説した。

 論点が自分たちの問題意識とかみあった時には、中国側の出席者が大きくうなずく。この提起も、そういう表情の見えた場面の一つだった。

核兵器廃絶のイニシアチブをとる国が核保有国のなかから出ることが切望されている

 さらに、私は、核兵器廃絶の課題について、一方では、核兵器使用の可能性がかつてない形で現実の危険となっており、この課題がいよいよ重大で切実なものとなっていること、他方では、国際政治の上で核兵器廃絶を求める声がかつてなく大きくなり、時にはアメリカをふくむ核兵器保有国に「核兵器の完全廃絶」を約束させる力を発揮するまでになっていることを、指摘した。これまでは各国の平和運動団体だけが参加していた日本での原水爆禁止世界大会に、各国の政府代表が参加し、各国の元首や首相のメッセージが多く寄せられるようになったことは、そのことを、具体的事実で示すものである。

 私は、「参加した政府代表は、エジプトの外務次官、マレーシアの軍縮大使とバングラデシュ、南アフリカの政府代表、メッセージを寄せた元首・首相は、マレーシア、ベトナム、ラオス、バングラデシュ、南アフリカ、ニュージーランド、スウェーデン、タイ」と国名を具体的にあげて紹介し、その上で、次の点を強調した。

 「世界はいま、核保有国のなかから、核兵器廃絶へのイニシアチブをとる国が現れることを痛切に望んでいるし、そのことがいまこそ必要になっている」。これが、核保有国である中国への期待の表明であることは、誰にも分かることだった。

視点や角度のちがう認識や見方のつきあわせが、お互いに有意義

 唐家セン(とうかせん)外相との会談でも分かったように、私のこの問題提起は、アメリカの戦略を分析する視点の点でも、国際ルールを破るその単独行動主義、覇権主義を批判する角度の点でも、中国側のそれとはかなり違っていたように思う。

 こういう視点や角度の違う認識と見方、あるいは政策論をつきあわせるところで、それぞれが問題の新たな整理もできるし、お互いにより充実した認識をもつこともできるようになる。対話を積み重ねることの意味は、なによりもその点にある。

 それだけに、私の発言を受けての江沢民(こうたくみん)総書記の発言に、私は非常な重みを感じた。

 江総書記は、「私は真剣に不破議長のお話をお聞きしました」と述べて、まず朝鮮問題を取り上げたあと、「不破議長は、国連の尊重と核兵器禁止について提起されました」と問題を整理したうえで、提起された問題についての中国の態度の説明にすすんだ。(つづく)


2002年10月10日(木)「しんぶん赤旗」北京の五日間(24)中央委員会議長 不破哲三 江沢民総書記との首脳会談(四)

“イラクへの軍事攻撃に反対する”――中国の立場は明確

 江沢民(こうたくみん)総書記は、まず国連の尊重という立場から、いま世界の状況をどう見ているかについて、語りはじめた。

 「中国は、国連安保理事会の常任理事国として、すべての活動で国連の決定を尊重しており、湾岸戦争のときにも、コソボ問題(対ユーゴ戦争)のときにも、国連で解決することを主張してきました。しかし、いくつかの国は、国連の役割を尊重せずに、国連の頭越しでやっています」。

 いくつかの国というのは、対ユーゴ戦争が、アメリカの単独行動としてではなく、NATO(北大西洋条約機構)の集団的な戦争行動としておこなわれたことを、さしているのだろう。

 「決定的なこととして、いま、きびしい問題が出されています。それは、イラクにたいする軍事攻撃の問題です。中国の態度は明確です。イラクにたいする軍事攻撃には反対です。平和的な話し合いを通じて解決することに努力しています。目下、世界の大多数の国は軍事攻撃に反対しています。一昨日は、アメリカから、国連はもはや必要ではないという声が聞こえてきました」。

 一昨日といえば、八月二十六日。チェイニー副大統領が、アメリカの退役軍人会で、ブッシュ政権のイラク攻撃の決意と計画を詳細に展開してみせた日である。副大統領は、この演説のなかで、「先制攻撃」に踏み切る断固たる意思を強調し、それに反対するいくつかの議論に猛烈な反撃をくわえたが、「先制攻撃」が国連憲章のもとで許されるかどうかというもっとも核心をなす問題については、ついに一言も語らなかった。

立場も視点も違う二つの党が一致したことの意義は大きい

 対イラク戦争に反対するという言明を、江総書記がおこなったのは、たしか、ここでの発言がはじめてだった、と思う。立場も視点も違う二つの党が、たがいの見方を率直につきあわせながら、国連とその憲章の尊重を基準にして世界の秩序を確立してゆくべきだという長期的視野での世界論の点でも、イラクにたいするアメリカの軍事攻撃の企図に反対するという当面の緊急任務においても、合意を確認しあった意義は大きい。

 つづいて、江沢民総書記は、核兵器の問題をとりあげ、「核兵器の先制不使用と核兵器の全面的な禁止」が、中国の一貫した主張であることを強調した。これも、現在の国際政治のうえでは、重要な一致点である。「核保有国のなかから廃絶へのイニシアチブを」という私の提起への直接の答えはなかったが、長い視野でみれば、この問題提起が必ず生きてくることを、私は確信している。

資本主義国の共産党の運動をめぐって

 江総書記は、そのあと、中米関係の見通しやそれにのぞむ姿勢や世界の共産主義運動の問題などについて見解を述べた。最後の問題では、「アジアでは、貴党が四十万の党員をもち、八十年の歴史をもつ最大の共産党です」と日本共産党の存在と活動への評価の言葉を述べながら、ヨーロッパの多くの国で「マルクス主義政党が、社会民主主義に取って代わられる状況」が生まれていることなどをあげて、「資本主義国の共産党」の「低調さ」についての懸念を表明したのが、特徴的だった。

 江総書記は、最後に、十一月に開かれることが発表された第十六回党大会について、それが「新しい世紀の最初の大会」として大きな意義をもつことにふれて、また対日関係について簡潔にふれてその発言をしめくくった。

 私は、その発言をうけて、資本主義国の共産党の運動の問題についてだけ、補足の発言をおこなった。それには理由があった。四年前の最初の首脳会談のとき、会談の終わり間近になって、江総書記の方から、「冷戦後の世界の共産主義運動の問題」が提起され、「私自身の考えを述べたうえで、不破委員長のご意見をうかがいたい」ということで、たがいの意見を交換しあったことがある。そのとき、江沢民総書記が「私の専門は工学ですが、党中央にきてから、この問題にも取り組みました」と、たいへん謙虚な言い方で問題を切り出したことは、いまも記憶に鮮明に残っている。

運動の前進か後退かの分岐には、ソ連問題がある

 私は、訪問の準備段階から、「その議論の続きもぜひやりたい」との考えを中国側に伝えてもいたので、経過からいっても、補足の発言をする責任と義務を感じたのだった。

 私が、「前回、世界と社会主義の問題について話がありました」と切り出すと、江総書記は、おぼえているといった表情でうなずく。私は、続けた。

 「資本主義国の共産党の運動は全体として低調だという話がありましたが、その根本にはソ連問題がありました。前回も、ソ連が解体したことで、その問題がなくなったわけではない、と述べました。ソ連への追従を方針としてきた党は、ソ連の解体で深い影響を受けた上、そのことが国民の不信の原因ともなっています。その問題をきちんと清算しないと、国民の信頼をかちとりつつ活動する道は開けません。そういう立場に立てるかどうかが、前進するかどうかの分かれ目になっています。

 資本主義諸国でも、私は、この問題できちんと決着をつけた諸党が前進していることに注目したい、と思います。そういう党は、ヨーロッパにも存在しています」。(つづく) 






(私論.私見)